ガーデンライト


小松島のホームセンターでしゃれたガーデンライトを見つけ、うれしさの余り跳び上がった。

以前から欲しいと思っていた品で、自宅改装の時も建築屋にカタログを持ってこさせて、見積もらせたが高価な上にデザインが気に入らなかったし、妻が反対したので断ったのだった。それでも安くてデザインのよい物がどこかに売っていないものかと気にかけて探していた矢先のことだった。

しかし気に入った物が見つかったのだからすぐさま買えばよいものを、ぐずぐずと迷うのが私の性分なのだ。

ガーデンライトは、つい最近まで私の父が設置した物があって、老朽化し錆びて電球も切れていた。それでも庭のエクステリアとしては結構気に入っていたのだが、妻が大ゴミに出してしまって、代替品が欲しかったのだ。

早速妻に相談するが 「そんなのいらないわよ、また大ゴミが増えるだけじゃないの。あってもなくても良いような物は、我が家には必要ないの。」 とけんもほろろに拒絶した。

しかし余りの欲しさに再び見に行った。

売り場の女性に、土台となる脚元はしっかり固定できているのか?とか、

組み立て式なのか?とか、

配線なんかを聴いたがパートタイマーのアルバイトの女性らしく要領を得ない。

しかし何度見てもパリの街角の街灯のような雰囲気を醸し出しているガーデンライトなのだ。

しかも18,800円という18万円と見間違うほど格安なのだ。

妻に 「いくら反対しても買うからな。」 と念を押す。

「ダメよ、電気代だってバカにならないし、漏電だって心配だし、そんな物いらないからね。」 と上から目線でものを言う。

うちの家庭は何時から妻に主導権が移ってしまったのだろう。

「ここは俺の家だぞ。俺は賃借人じゃないんだぞ、何でおまえの許可を得なくちゃならないんだ。俺は絶対買うからな。」 といって3度目見に行った。

背丈が2メートル30センチ、アームの両脇に1灯ずつのガス灯のような照明が付いている。

どうしても買いたいと思った。

しかし、買うにしても運ぶのに乗用車ではダメかもしれないし、持ち運びも一人では無理かもしれない。そうだ自動車整備業を営んでいる友達に頼もうと同級生の友人に相談する。

「軽トラがあるし、設置するの手伝ってやるよ」 と言う。友達というのは良いものだ。

早速軽トラックで友人とホームセンターに訪れた。

友人が 「気に入らないなぁ。支えている土台が小さすぎてぐらぐらしているではないか。もし孫がぶら下がったりしたら大事故になるぞ。おまえは欲しいと言うが、俺もという気にならない。たいてい欲しい欲しいと思って、いざ買ってみると、何でこんな物を買ってしまったんだろうと後悔することが多いんだ。俺は何度も経験している。逃げていくもんじゃなし、もう少し頭を冷やして考えたらどうだ。」 と言うのだ。

「おまえに孫の心配をされると買えないじゃないか。もし孫に何かあったら、そら言わんことじゃないというだろうし、第一妻が何と言うか」 それであきらめて買わずに帰ってきた。

しかし日がたつにつれて庭を見るたび、ガーデンライトのある庭が想像されて未練が募るのだ。

妻をホームセンターに案内し現物を見せて説得し、再び友人の元へ行き今度こそ買うぞと友人と軽トラックで行った。

注文すると在庫がないという。取り寄せになって1週間から10日の日数が掛かるがそれでよいかと言う。

これで何回来たのだと思う。世の中なかなか思うようにははかどらない。

それでも注文して1週間を経て連絡を受け、また友人と品物を取りに行く。組み立て式になっていて、意外とコンパクトで、乗用車にも乗るサイズだった。

友人が 「俺の工場で組み立てよう、俺の所なら工具類も揃っているから。」 というので友人の工場で組み立てた。工場前を電気工事の会社の役員をしている同じ同級生が通りかかり、「何をしている」 と言ってガーデンライトの電気配線を手伝ってくれた。

”俺一人じゃとても難しくて組み立てられなかっただろうな” と、今日はついているなと思った。

しかしあぁでも無いこうでもないと組み立てているとき電気工事の友人が電球をねじ切ってしまった。「なんだこの粗悪品、どうせ低開発国で作った安物だから、ねじって回すだけでちぎれてしまった。買ったばかりなんだから、取り替えて貰え」 と言うが、それこそこんな安物なのだから取り替えて貰えるわけがなかった。

整備士の友人がスリガラスだけど電球があるからつけておくよと言って代替品としたが、パリのセンスがそれで落ちた。粗悪品かもしれないがその電球はガス灯に似せた電球だったので、私はベソをかいた。

組み立てが終わり軽トラックにそのガーデンライトを積み込むのが大変だった。軽自動車には2メートル30センチのガーデンライトはすっぽりとは収まらず、3人で考えたあげく、運転席に立てかけて縄で縛った。

私は、乗用車で先に帰り庭への取り付けの準備をして友人を待った。

やがて友人が軽トラックで到着、駐車場へ乗り入れた瞬間 ”ガチャーン” と大きな音がした。

驚いて駐車場へ行くと、友人が頭の尖った先を運転席の上に結わえたものだから、駐車場の天井を突き破り、大きく穴が開き、しかもガーデンライトの2灯の内の1灯が力なく折れ曲がり首を垂れていた。

もう本当に泣きたくなった。

友人は困ったと思案顔で真剣に考え込んだ。どうにかすると言って部品を持って帰った。

妻が怒鳴った 「ガーデンライトはどうなったってかまわないのよ。駐車場の屋根はどうするのよ、全面的に修理となったら何十万円もするわよ。貴方のわがままでこうなったのよ。我が家は年金暮らしなのよ、いくらでもお金があるんじゃないのよ。こんなに大きな穴空けて、どうにかしてよ。」

私はむなしく建築屋に電話を入れた。

夕方友人が良い考えが浮かんだとやってきて、ガーデンライトを修理し、うまくいったと意気揚々と引き上げていったが駐車場については一言も触れなかった。

私は今、庭に佇むガーデンライトを部屋から眺めるにつけ心の癒しを感じている。

駐車場の見積もりが来るのにびくびくしながら。

(忠)


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