楽しんだ趣味あげくに


“明日やれることなら今日やらぬ、後に回せば楽でいい”

とのんびりと中央会の原稿を先延ばしにしていたら、たちまち締め切り日が来て息苦しくなった。

病後自宅にこもりがちの生活をしていたら、書ける話題もエピソードもネタもない。

体調も大分良くなってきた。そこで一計を案じた。

定年退職のサラリーマンなら誰もがやる趣味で社会にかかわっていこう、そうすれば書ける材料が出てくるに違いないと考えついた。

そこで水彩画教室月3回、パソコン講座月1回、将棋の愛好会月2回、ワインを味わう会月1回とどんどんスケジュールを増やしていき、このうえ県外の孫に2ヵ月に1回は会いに行こう、年2回の日帰り旅行と3年に1度くらいは外国旅行に行こう。

そう思った。

これだけやれば、さぞかし楽しかろう。

私も60歳も後半に入りこれからの体力は落日のごとくだろう。今後の人生のなかでは今が一番若いのだから今やらないと永久に巣ごもり人生になってしまって、やがて体中をパイプでつながれたスパゲッティ症候群の植物人間になるなんてまっぴらごめんだと思った。

水彩画教室は、夕刊に近くの公民館で地域の人達が水彩画を楽しんでいる記事があり、参加者が少なく多くを募る旨が書かれていた。

そこで電話をすると近所の薬屋の奥さんで絵を教えているのは私で是非来て欲しいと頼まれた。

夕刊に出るくらいだからさぞかし多くの申込者で一杯だろうと指定された日に画道具をもって参加すると申込者は私一人だった。

従来の受講者はわずかに3人、講師と受講生4人が前に置かれた華や果物、洋酒のビンなどの静物をモチーフに写生してその後できた作品を品評しながらおしゃべるするものだ。他の受講生はすべて年配の女性でもう10年以上も絵を習っていると言って私とは比較にならないくらい上手なのだ。

その人達をよく観察すると無言の序列があって、それは年齢とは関係なく上手な人ほど貫禄を示す仕草があり、何か大奥を連想させた。

私の作品は並べてみると明らかに見劣りがするので受講生は見下げた感じだが先生は私の絵をことのほか良く褒める

「センスは良いし、個性的な絵だし、続けると伸びると思うわよ」

と何時止めるか分からない私を引き留めようとしているのが透けて見える。

12月には公民館祭りがあって、水彩画のブースがあり、今までに描いたスケッチブックを持ってくるように言われ、その中から先生が3点選び出品するよう命じられた。

将棋は、友人から誘われて、隣町の住民で将棋の愛好家が集まって楽しんでいるものだが、これも参加者が少なく私も友人をかき集めて参加させてもらっている。

これは男性の年配者の集まりだが将棋の好きな者ばかりなのでなかなか手強い人ばかりだ。私のような早指しは少なくじっくり深く読んで指す人が多い。実力は同レベルかなぁと思ってもミスが少ない。

「待った」と大声で言っても、何言ってるのと待ってくれることは少ないのでこちらの勝率は上がらない。将棋は好きで指し出すと時間は忘れるが負けるとストレスもたまるのである。

ワインを味わう会はパソコンの講師に誘われた。

これはワインを主に販売している酒屋の一室で行われる。

ソムリエから30分ほどのワイン講座を受けた後ワインを味わう。受講生はマイグラスを6個用意する。

酒屋からは6種類のワインと水と味きき後のはき出し用のコップが用意される。受講生は全部飲んでしまうのでこのコップを利用する者はいない。もちろん料理やチーズも出て3回で1万円の会費は割安感がある。円高でワインも安くなっているのだろう。

会員は10人ほどですべてパソコン講師の教え子ばかりである。

グラスになみなみと注がれたワインを6杯も飲むと相当酔ってくる。会員は強い人ばかりと見える。

男性4人に女性6人、男性は年配者だが女性は50歳前後のワインと同じ熟成された女性達だ。

酔ってはしゃいでいるのは私だけで、隣に座ったでっぷりとした堂々たる体格の女性にマツコさん、マツコさんとなれなれしく話しかけたら席を替わられた。

パソコンの先生に

「色鮮やかで美しい赤ワインも先生の美しさの前では色あせて見える」

なんてよこしまな気みえみえのお世辞を言ったら、先生が

「忠さんの笑顔を見ていると癒されるのよねぇ、みんなそう思わない」

なんて女性陣に同意を求めたら、みんな「そうねぇ」と気のない返事でしらけていた。

色々の趣味も孫に会う楽しみとは比べものにならない。孫はむしゃぶりたいくらい可愛い。

義弟が3歳の女児孫に可愛さのあまりほっぺたにキスしにいったらかきむしられたと傷だらけの顔を見せた。

私には、芦田愛菜ちゃんと同じ7歳の孫がいるが、そのつぶらな瞳で私を見つめる仕草を見れば思わずハグしたくなる。先日も娘夫婦と一泊旅行でレオマワールドに行った。孫を独占して遊んだが本当に楽しいのだ。

目はパッチリだが鼻は少々ひしゃげているので

♪ブタ・ブタ・子ブタ お前のお鼻♪

と歌えば

♪ハゲ・ハゲ・じいじ じいじの頭♪

とやり返してくる。

何歳ぐらいまでなついてくれるのだろうと不安になる。

ところが急に忙しくなったスケジュールをこなしていたら、やにわに腰痛に襲われた。

近くの評判の整形外科医院へ行った。レントゲンを撮っても骨に異常はなく筋肉の痛みだろうと痛み止めの注射を打った。

1週間たっても痛みは増すばかりで、注射も飲み薬も湿布も全く効く様子がない。治る気配がないと医者に言うと急に不機嫌となった。

2週間たってこれは癌が転移しているのではないかと医者に訴えたら、また近くの病院へ紹介状を書いてくれてMRIを撮って来るよう指示された。そのCDを持って再び医院を訪れ医者に見せたら

「腰骨が霜降りのように白くなっているのは、骨が脂肪に変わってしまっているのだろう。加齢による現象でよく見られるがこれほどひどい症例初めてだなぁ。この白いのが癌であればもう手遅れだなぁ。しかしMRIを撮った医者の所見を見なければ何とも言えない。それまでは対症療法とるしかないなぁ」

と訳の分からない説明をした。

評判の医者がMRIの結果みて理解できないのかとあきれた。

癌なのかどうなのかは患者にとって重大事だぞと言いたかった。

大阪維新の会ではないが厚生労働省へ医者不適格者は医師免許を剥奪するよう働きかけて貰いたいと思った。

今3週間目に入っているが痛みは減らないので、過密になったスケジュールをキャンセルしている。

人生うまくいかないものだ。

 

(忠)


前ページに戻る

Copyright(C)2009 徳島県中小企業団体中央会 All Rights Reserved.