ワイン日本酒


夏の暑さも峠を越え、肌に秋の気配を感じるようになって、ワインの味覚も一層良くなってきた。月に1度のワインを味わう会に入会するまで、夏はビール派だったが、今では晩酌にはワインと様変わりしてきた。

ただ私のように高級ワインに手のでない年金ジジイには、手頃な値段のワインから美味しい物を探すことになるので、当たり外れが大きい。最近も酒専門安売りスーパーでフランス・ブルゴーニュ産の赤ワイン2002年物を見つけた。フルボディ(芳醇)特価2200円と表示してある。

もう心うきうきで持ち帰りコルク栓を抜き、ワインをグラスに注ぎ、香りを楽しみ、ブルゴーニュのコート・ドール(黄金丘陵)の陽光を浴びた斜面に広がる畑に、たわわに実ったブドウをイメージしながら、口に含んだ途端、酸っぱさが口の中を覆い尽くしがっかりした。やはり渋みの強いボルドー産が良かったと悔いた。

当たり外れはあるが500円前後のスペイン産でも結構美味しいワインがある。そのワイン選びも楽しみの一つだ。

ワインを味わう会は、ワイン貯蔵庫を持つワイン専門店の別室で行われる。ここの店主は、数多くのワイン教室を持ち、その講師を務める。我々の会員は8人ほどで男性2人に女性6人、それぞれがワイングラスを持参して5種類から6種類のワインを味わいブドウの品種や産地を当てる。

講師の解説の後、奥さんの手料理やチーズも出される。あくまでテイスティングが目的なので一口含んだ後、吐き出し用のコップや口ゆすぎの水なども用意されているのだが、我々のメンバーでそんな事している者は一人もいない、注いだワインは残らず飲む。ワインを5杯も6杯も飲むと相当酔うから、後半は宴会のようになる。

最初は、熱心に質問をしていたウワバミのような熟女もやはり後半は酔いも回り魅惑的になる。たわいのない話で盛り上がり私にとって甘美な時間が訪れる。

隣の女性が

「貴方痩せてるわねぇ」

と言ったので、変な気持ちがあったわけではなく、いや少しはあったかもしれないが、少し同情を買おうと

「そりゃそうでしょう、さりげない生活に見えるでしょうが、重い病を抱えているんです、もう手の施しようがなくて余命3ヶ月と診断されているんです。それで何か想い出が欲しくてねぇ」

と言うとたちまち涙ぐみ

「私で良かったら何時でも想い出にして」

と言うかと期待したら

「冗談なんでしょう、貴方1年も前から、それらしきこと連呼しているわよ」

ときた。

敵もさる者引っ掻く者で、さすがウワバミ熟女だ、よく憶えている。

この会で女性を口説いてばかりいると思われるのも不本意なので少しワインの知識も披露しておこう。

ワインの産地は今や全世界に広がっているが、生産量の順位はフランス、イタリア、スペインと続く、その中でもやはりフランスワインが品質共に突出している。

ワインを語ると奥が深く長くなるのでフランスワインに絞ると、フランスには産地が数多くあり、パリからセーヌ川をさかのぼったところにシャンパン(特にドン・ペリ)で有名なシャンパーニュがある。シャンパンと名付けられるのはここだけで、他産地の物は、スパークリングワインという。

南に下がってソーヌ川沿いにロマネコンティなどで知られるブルゴーニュ、また少し下がると11月21日に解禁となるボジョレ・ヌーボーで有名なボジョレ、更に南のローヌ川地方、もっと南の地中海に面するプロヴァンスやラングドック。また西の大西洋にそそぐロワール川沿い、それから南のジロンド川沿いのボルドーなどがある。

これらの中でも特に二大産地と言えばボルドーとブルゴーニュだ。

ワイン銘柄表示は醸造所や貯蔵庫のあるブドウ園の名前が付されている場合が多く、ラベルにはブドウ畑の名前や作り手の名前が表示されている。ビンの形だとボルドー産はいかり肩ずんどう、ブルゴーニュ産はなで肩で腰太、ブドウの品種もボルドーがカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ−、カベルネ・フラン、プディ・ヴェルド等のブレンドだが、ブルゴーニュは、ピノ・ノワールの単品種物が多い。色は前者が濃紫紅色香りは内向型で後で馥郁としたスモモのような香りが広がる。後者は鮮やかな紅色で香りは発散型で木イチゴやさくらんぼを感ずる。

誠にざっくりした説明だが、この上どんな料理に適するかなどを学ぼうとすれば後何年かかるか判らない。おそらくソムリエになる人は抜群の記憶力と鋭敏な感覚豊かなボキャブラリーを持ち合わせているのだろう。私のようにボケブラリーが進むと味や香りを憶えるのは至難の事だ。

10月1日は、日本酒の日だそうだ。秋も深まると日本酒が恋しくなる。

南部酒という演歌に

♪酒を飲むなら肴はいらぬ、茶碗一つあればいい、地酒1本右手において♪

と歌詞は進むが、私は、肴なしでは飲めない。

酒そのものを味わうのならワインにはチーズ、日本酒なら冷や奴だろう。

夏の夕餉に、冷や奴が膳に出されると何とも言えぬ清涼感が伝わってくる。刻みネギに鰹節その上に摺ったショウガを置きスダチを掛けた豆腐は酒の味が倍増する。

また夏のつまみとしては、ざる蕎麦もいい。

昨年東京に行く機会があって、昼食に蕎麦屋へ入った。すぐ職人風の老紳士が入ってきて隣に座り、まず焼き味噌と酒2合を注文し、それを仕上げた後、ざる蕎麦をつるつると平らげてさっと出て行った。何と粋なんだろうと、そのあまりのカッコ良さにしびれた。

私も慌てて板わさと酒一合を追加注文した。そして江戸時代、蕎麦屋が職人達の唯一の憩いの場であったことを思い出した。その蕎麦屋のメニューを改めて見直すと、酒の肴として板わさ(板蒲鉾のスライスをわさび醤油で食す物)、焼き海苔、そば豆腐やそば味噌などがあった。

よく考えてみると現役時代、勤務先の前の蕎麦屋に良く通ったが酒は飲んだことはなく、こんなメニューもあったのかなぁと考えたが思い出せなかった。しかし徳島の街中の蕎麦屋は次々と閉店し、今の私にとってもざる蕎麦1枚がヘビーになってきているので最近は行かないが、あの辛みのきいた夏大根おろし、わさび、ネギ、ゴマ、ノリを汁に入れて、それに浸したざる蕎麦は問答無用に美味しいのだ。

この季節の肴はやはりサンマだなぁと思い、今日の夕餉がサンマの塩焼きなら日本酒、イワシのニース風マリネのような物ならワインにしようと今から晩酌を待ちわびている。

旨い酒を飲んで今日も胸の固まりを溶かそうと秋の深まるのを楽しみにしている。

    

(忠)

 


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