雑 感

人 の 口 に 戸 を 立 て ろ


 年末にタイへ同僚達とツアーを組んで行った。2泊3日の小観光旅行だが、タイの気質や経済、文化、社会を垣間見た。
 タイは日本の1.4倍の国土面積をもち、5,750万人の人口を擁する王国である。
 タイと日本の関係は、緊密でタイ王室と日本の皇室との交流も盛んであり、日本からタイに向かう旅行者数は38万5千人、日本を訪れるタイ人の数も9万8千人に達するそうである。タイは「日本の台所」として焼鳥、海老など輸出し王政のもと国づくりを行い、10%を維持し、経済は早いスピードで拡大している。
 関西空港からタイ航空で約6時間バンコクのドーンムアン空港に降り立った。ムッとする暑さ、低湿気と聞いていたが、蒸し暑い。バンコクの街は、容赦なく照りつける太陽の下、すさまじい交通渋滞があり、この間をぬってオートバイが疾走する。信号はほとんど無い。車優先であるらしい。バンコクの路上を走る車は、350万台であるというのだから車から吐き出される排気ガスが熱帯の暑さを増幅させる。
 車の往来を見ていて驚いた、これだけの円高でありながら、メイドインジャパンの車が溢れかえっているのである。乗用車はもちろんバス、トラック、オートバイまでが、トヨタ・ニッサン・ホンダ・ヒノなどのネームをつけている。軽三輪車の荷台を座席にしたトゥクトゥク(タクシーの一種)までも日本製なのである。
 バンコクでは、タイ古典舞踏を鑑賞しながらタイ料理に舌つづみをうち、歴代のラーマ王が造ったきらびやかな宮殿群を見物、寺院を守る猿の神様ハヌアーンが仁王立ち、黄金の塔などが林立するエメラルド寺院を拝観し、キラキラと輝くタイルで覆われた大仏塔に登る。
 街の中央を流れる大河チャオプラヤ川を細長い水上観光バスで遊覧、水上市場でしつこく土産物の押売を受ける。ローズガーデンを散策し、象に乗り、大蛇を首に巻いて写真を撮る。タイ式マッサージを経験し、ゲイバーのショーを楽しむ。ツアーであるため一つの観光の度に、皮製品、シルク、宝飾等の土産店に放り込まれる。土産品店に入るや、ハゲタカが肉を見つけた如く、店員が取り巻き買い物を強要する。その迫力は半端ではない。
 その迫力に気押されシブシブ少しずつ土産を買わされるハメになる。もっとも同僚のなかには、破格の買い物をするものもいる。一つ買えば一割引、二つ買えば二割引、それ以上買えば五割引、値段はあるのかと疑わしくさえ感じさせる。
 発展途上国である。この国の働く若者達の溢れるばかりの目の輝きは、経済成長率実質ゼロの「老いる国」日本とは多いに差がある。ハングリーはあくなき生活向上への欲求がみなぎり豊かな生活を目覚めさせ、仕事への情熱を駆り立てる。
 同僚からこっそりカラオケに行かないかとの誘いを受ける。途中、大半の同僚達を残してバスを降りる。〔上司の前でも堂々と降りるところが私の見上げたところ〕
 カラオケ場は、広いスナックのような感じで、客は日本人ばかりである。演歌が歌われたりしている。
 女性は多い。早速女性に取り囲まれて水割りを飲む。日本語はペラペラである。甘い誘惑を受けるが、謹厳実直、石部金吉石より硬い金兜。色っぽい魔女たちの誘惑を歯を食いしばってこらえ、すくっと立った晴れ姿、転がるように逃げ帰ってきた。それはまあ、抜け駆けしたようなもので、ホテルの部屋には入りにくく、ためらいもあって、暫く待ち、蚊が一匹、戸の隙間から忍び込むようにして、そっと素早く部屋に滑り込んだのである。 翌朝食事に行ってぶっとんだ。同僚達は大誤解をしているのである。同僚達は、非難ごうごう、悪意の目で迎え、日本の恥だ、HIV感染だと罵るのである。
 しかし私は否定も弁解もしなかった。〔立派〕開き直って返って大ボラを吹いてしまったのである。〔バカ!〕
 これが又いけなかった。同僚のジェラシーに油を注いでしまった。おまけにドジの私は帰りの観光バスにごっそり土産を置き忘れてきてしまった。同僚達は同情するどころか嘲笑の眼差してせせら笑うのである。〔これは差別だぞ、キャベツじゃないぞサベツだぞ、ジンケンジュウリンだぞ〕
 帰国して又のけぞった、行きつけの呑み屋、私の立回り先にタイでの大ボラを喋って回っているのである。何処へ行ってもひやかされるのである。〔なんたる無礼、なんたる悪意〕同僚のツアーとはいえいささか常軌を逸したと反省しきりの旅行であった。
 ちなみに、置き忘れた土産は旅行社から見つかったとの連絡があり、船便で送っているとのことであったが、待てど暮せど帰国して二ヶ月半になろうとしているのに未だ手に届かない。

(忠)