雑 感

床屋に行く金ひまあれど髪がない


 中年男の醜態に「チビ・ハゲ・デブ」がある。筆者は毎日形状記憶ムースで整髪を行うが、時間と雨と風には弱く、朝の颯爽たるボリュームたっぷりの頭も昼を過ぎるとバーコードよろしく無残にも少ない髪がべったり頭皮に張り付く、ハゲには前方後退型と後方拡散型があるが、当方両方を兼ね備え、前頭部から頭頂部にかけての髪は少ないが、横・後ろにはタップリとあるので、江戸時代に生まれていたらサカヤキは美しく、そのチョンマゲ姿はさぞかし美男子に見られたであったろう。
 顔の美形は髪によるところが大きい。我が親不孝ものの娘は父と歩くのが恥ずかしいと言って、中年男から見たら張り倒したくなるほどの足が長く、髪は風になびいているが、顔立ちは良くないボーイフレンドを連れてきて紹介した。だいたい、ハゲが好色で、醜悪と見るのは偏向した美意識である。
 母方の姻族はハゲが多いが、父はロマンスグレーのふさふさとした頭であった。当方30歳頃から白髪になり、家内に勧められて染色し、40歳からハゲてきた。同僚はおもしろがってかつらをつけだの、三段式増毛法をあからさまに勧めるが、これを言われるたびに内心ひきつっている。何がかつらだ、増毛法だ。もしこれをしたら会う人ごとにあの人はアデランスだと吹いてまわるだろう。聞いた人は今以上に筆者の頭に注目するだろう。そして思うだろう。“あの人はもてたくてかつらをつけているのだ嘆かわしい。”
 ハゲは遺伝だけではないのである。真面目で何事にも新摯に取り組み、苦労をし、ストレスがたまっているのである。
 高価な養毛剤だの効果があったためしがない。いい加減邪道であるかつらや植付増毛などやめてもらいたい。かつらなど虚飾であり欺瞞である。自毛が再生できる研究開発がなぜできない。大企業であれば東大からでも専門家を拉致してきて大金をかけて研究させろ。
 あぁ〜、髪が欲しい。

(忠)