「貴方ってバカねぇ。」 「自転車は歩道を通るものなのよ。車道なんか走るのは競輪選手ぐらいのものよ。車道を走ったりしたら、すぐ車にはねられるでしょう。」

「そんなことはない。自転車は車道を走るものなんだ」

「危ないでしょう、バイクだって走ってるのよ、そんなこと小学生だって判るでしょう。」

「道路交通法では確か自転車は車道を通るものだと、記憶している。」

「絶対にあり得ないそんなこと。この間のクローズアップ現代でも言っていた。私に車道を自転車で走ってはねられろと言うの。」

妻とたまの散歩中、勝手に怒り絡んできた。

「俺は道路交通法の話をしているのであって、そんなこと言ってない。」

「貴方本気でそう思ってるの?警察が歩道を走る自転車に注意しているの見たことある?明日私警察に聞いてみる。貴方のバカさ加減を証明してあげるわよ。」

妻にコケにされて悔しかった。帰宅してすぐインターネットで道路交通法を紐解いた。

よく解らない。

何度読んでも理解できない。

年をとると読解力も落ちているし、条文もどうしてこんなに難しく書いてあるのだろうと不思議に思うくらいだ。

只自転車専用道路の標識と自転車及び歩行者専用の道路標識があること、また徳島市佐古に日本初の歩行者道と自転車道が併設された道路が設置されたところまでは知った。

明くる日勤め先からの帰宅途中福島交番所の前をさしかかったので、このことを交番で確認しようと立ち寄った。

この交番前に、つい最近まで警察学校を卒業したばかりと思える警官が毎朝立っていて、通行する人全員に、本当に全員で、子供大人の区別無く、歩く人、自転車の人、赤ちゃんにまで 「おはようございます、おはようございます」 といちいち頭を下げて挨拶をしていて、それを見て痛く感動し胸が熱くなる思いがしていたので、何時か声を掛けたいと思いながら、いつの間にかいなくなった。どこか配属先が決まったのだろう。

交番のドアを開けようと思ったら鍵がかかっていて開かない。よく見るとインターホンを押して下さいと大きく表示してある。窓越しに見ると2人の警察官がいて書類と首っ引きになっている。気がつく様子が無く、インターホンで妻とのもめ事を言うのも、はばかられ不審者と思われないか少し気になったけれど、その場をそっと立ち去った。

昔の巡査は地域に溶け込んでいた。

近所の世話話を聞いて解決してくれることもあった。

もう40年近くも前の話だが、私が田舎へ巡回指導で出張したとき見合いの話が出て、出張先の事業所の娘さんと急遽見合いした。そこでそこの社長が連絡したのが近くの小学校の教頭と駐在所の巡査だった。床の間のついた広い日本間で縁側沿いに立ち会いの2人が座っていたのを思い出す。

交番は地域に密着し、広く解放すべきだと思うのだが、無秩序な世相がそうさせてしまったのだろう。

それでは電話で尋ねようと、電話帳を操っていると警察テレホンサービスがあって、そこに 「高齢者交通安全相談ダイアル」 というのがあった。

これだと思って電話した。

「こうこうしかじか、歩道は自転車OKなのでしょうか?」

「そんなことわねぇ、本部の交通指導課に聞いて下さいよ」

「本部まで電話するんですか?」

「あんた何処の人、ああ大和町ねぇ、それじゃ東警察署に電話して下さい。今の時間じゃ宿直しかいないだろうがね。」

ぶっきらぼうで無愛想、何が相談ダイアルだと思いながら時刻を見ると午後6時前、行きがかりじょう、今日決着をつけようと本部に電話した。本部は担当を探すのに何人も替わり、結局 

「歩道と自転車併用の標識のないところは自転車は歩道を通ることはできず、自転車は車道を通ること。」

といかにも不機嫌に答えた。

妻を完膚無きまで言い負かし、もう二度と私の言うことに抵抗しまいと思った。

翌日テレビ映画を観ていて、

「主人公の案うまくいかなかったなぁ」 とつぶやいたら、

「貴方バカねぇ。逆じゃないの!作者の意図を反対に解釈するなんて。大分ボケ進んできたわねぇ」

「そんなことはない、お前が間違っている!」

「勤め先の人に聞いてみなさいよ。貴方のバカさ加減が解るから。」

と軽蔑しきった表情で罵倒した。

勤め先の人にも、その他の人にも聞いた。

私が合っていた。

二度妻をヘコました。

妻のむくれた横顔を見て、生涯をこれと伴に過ごすのかと思うとため息が出た。

そうだ、妻と喧嘩しない方法がある。

「そのとおりだ、お前は正しい。」 と大きくうなずくのだ。

 

どうせどうでも良いことなんだから。

 


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