(1)事業協同組合への加入の自由と加入拒否の「正当な理由」

Question

事業協同組合が、加入申込者に対して、正当な理由がある場合には加入拒否ができると聞きましたが、どのような場合に「正当な理由」として加入を拒否することができるのですか。

Answer

事業協同組合(以下「組合」という。)への加入の自由は、協同組合法の基本原則の1つです。
組合員は任意に加入し、また脱退できることが組合の重要な要件であり、組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は正当な理由がないのに、その加入を拒み、またはその加入につき現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならないこととされています(中小企業等協同組合法第14条)。
法は、組合が、相互扶助の精神を基調とする人的結合体であることから、加入の自由の原則をとっていますが、また、相互扶助の精神に基づき協同して事業を行う事業体であることから、組合の運営を考えて「正当な理由」のある限り加入を拒否することを許しています。
この「正当な理由」とは、組合への加入資格がある者に対して一般的に保証されている加入の自由が、具体的な特定人に対して保障されないことになっても、組合法の趣旨から、あるいは社会通念上からも、不当ではないと認められる理由をいうものですから、組合が「正当な理由」に該当するかどうかを判断する際には、この点に十分留意することが必要です。
組合が加入を拒否できる「正当な理由」は、その原因が「加入の申込みをする側にある場合」と、「受け入れる組合の側にある場合」とがあります。
前者については、例えば、
 ・加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるいは独占
  禁止法の適用を受けることとなる恐れがあるような場合
 ・除名された者が、除名直後、またはその除名理由となった原因事実が解消していないのに、加
  入の申込みをした場合
 ・加入申込前に員外者として組合の活動を妨害していたような者である場合
 ・その者の日頃の行動からして、加入をすれば組合の内部秩序がかき乱され、組合の事業活動に
  支障をきたす恐れが十分に予想される場合
 ・加入により、組合の信用が著しく低下する恐れがある場合
 ・組合員の情報、技術等のソフトな経営資源を活用する事業を行う際に、その経営資源や事業の
  成果等に係る機密の保持が必要とされる場合において、例えば、契約・誓約の締結、提出など
  の方法により機密の保持を加入条件とし、これに従わないものの加入を拒む場合(ただし、条
  件はすべての組合員に公平に適用されることが必要)
 ・組合の定款に定められている出資の引受け、経費、加入金の負担等が履行できないことが明ら
  かな者である場合
等が考えられます。
また、後者については、例えば、
 ・組合の共同施設の稼働能力が現在の組合員数における利用量に比して不足がちである等、新規
  組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となるよような場合
 ・総会の会日の相当の期間前から総会の終了するまでの間加入を拒む場合
等が考えられます。
以上が、「正当な理由」と認められる場合の例示ですが、前者の②④⑥及び後者の②は、平成3年の中小企業庁における組合制度の見直しにより、農業協同組合等他の協同組合制度の解釈を参考に、新たに「正当な理由」に該当するものとして認められたものです。(92-7)

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