(7)相続加入申出時に業法上の事業者としての地位を承継するまでに至っていない相続人の取扱いについて
Question
7月20日、組合員が死亡し、8月13日、相続人の1人が他の相続人の同意書を添えて、組合へ相続による加入申込書を提出した。
一方、砂利採取法による砂利採取業承継届書については、8月20日頃県の担当係に相談し、9月2日、県へ届書を提出、9月29日付で県より受理通知書が発行された。
同組合理事長は、相続による加入申込みは、中協法第16条第1項中、組合員たる資格を有するものが定款で定める期間(定款では30日以内)に申出をしたときは組合員になったものとみなされるのであり、本件の場合、同組合としては、その相続人は県に対して砂利採取業承継届書を提出しておらず、かつ、知事からの同届出書の受理通知書も受けていないので、組合員たる資格を有する者に該当しないとして、相続による加入申込を認めていない。
この件については、同組合の理事会で加入を認めない旨議決がなされた。
Answer
中協法第16条は、特に死亡した組合員の相続人が組合員としての地位を獲得するについて、その手続きに関する例外措置を規定したものである。
すなわち、相続の場合には、組合の承諾、出資の払込みといった通常の加入の手続を踏むことなく、相続人の一人で、組合員たる資格を有する者が、定款記載の期間内に、組合に加入の申出をするだけで組合員となれるものとして、加入の特例を認めている。
「組合員たる資格を有する者」とは、第14条におけるように、組合定款の組合員資格規定に該当する事業者をいうが、第16条の相続加入の場合は、加入の特例を認めた同条の主旨から、「死亡した組合員の事業を継承した相続人」について、広く「組合員たる資格を有する者」と解すべきである。
思うに、加入の申出の際に業法上の事業者としての地位を承継するまでに至っていないような場合であっても、近い将来その地位を承継することが見込まれ、かつ、その地位の承継さえ行われるならば事業を実施できる状態にあるというような場合があり得るからであり、このような場合においては、当該相続人を「組合員たる資格を有する者」と解するのが妥当であると考える。
また、「加入の申出」とは、死亡した組合員の事業を承継した相続人が、その組合員の属した組合の組合員となることを欲し、組合員たるべきことの意思表示を行うことであり、その申出の方法は、組合員たるべきことを欲する意図がわかるようなものであれば有効であると解される。
以上のことから、死亡した組合員の事業を承継した相続人は、届出時までに業法上の事業者としての地位を承継していなくても、組合員たることを欲する何らかの意思表示を定款記載の期間内に組合に対して行っていれば、第16条の相続加入の要件を満たしているものと思料する。
なお、一般に事業者が組合に加入しなければ採取数量の割当が得られず、事実上その営業活動が制限されるような場合においては、組合が正当な理由なく加入を拒否することは、独禁法上も問題となるので十分留意する必要がある。