(2)組合員の権利と義務について
Question
当協同組合では、毎年組合員対して組合に関する知識の普及・啓蒙のために講習会を開催していますが、今般の講習会は、事務局長の私が講師となり、組合員の有する権利と義務について講義することとなりました。
現在、中小企業等協同組合法を勉強しながら、整理を行っているところですが、なかなかまとめきれず困惑しています。組合員の権利と義務にはどのようなものがあり、どのように分類することができるのかご教示下さい。
Answer
組合員は、定款の組合員の資格に基づいて組合に加入するわけですが、その結果として、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)では、組合の健全な運営を確保するために組合員に対し、種々の権利を保証するとともに種々の義務を負わせています。
まず、組合員の権利には、組合員が経済的利益を直接享受することを内容とする「自益権」と、組合員が組合の運営に関与することを内容とする「共益権」とに大きく分類することができます。
自益権は、個々の組合員が単独で行使することができるもので、次のようなものがあります。
・組合事業(共同事業)利用権(組合法第9条の2)
・剰余金配当請求権(同第59条)
・残余財産分配請求権(同第69条による商法第131条の準用)
・持分払戻請求権(同第20条)
・出資口数減少請求権(同第23条)
次に共益権には、組合員が単独で行使できる単独組合員権と、一定数の組合員が共同することにより行使できる少数組合員権があり、前者としては、
・議決権及び選挙権(同第11条)
・定款、規約、議事録、組合員名簿、決算関係書類の閲覧謄写権(同第39・40条)
・代表訴訟権(同第42条による商法第272条の準用)
・理事及び清算人の行為差止請求権(同第42条による商法第267条の準用)
・決議取消し、決議不存在・無効確認の訴権(同第42条による商法第247条、第252条の
準用)
・設立無効の訴を提起する権利(同第32条による商法第428条の準用)
・合併無効の訴を提起する権利(同第66条による商法第104条の準用)
などがあり、また後者としては、
・役員改選請求権(同第41条)
・参事・会計主任の解任請求権(同第45条)
・総会招集請求権(同第47条の第2項)
・総会招集権(同第48条)
・会計帳簿等の閲覧謄写権(同第4条の2)
・清算人解任請求権(同第69条による商法第426条第2項の準用)
などがあります。
なお、以上のほか、組合員が行政庁に対して求めることのできる権利として、不服申立書(同第104条-単独組合員権)、検査請求権(同第105条-少数組合員権)があります。
組合員の義務については、
・出資義務(同第10条)
・損失額支払義務(同第20条第3項)
・経費分担義務(同第12条)
・共同事業利用義務(同第19条)
・団体協約遵守義務(同第9条の2第10項)
などがあります。
また、組合法では規定はありませんが、事業協同組合の模範定款例第18条に組合員の事業内容届出の義務があります。そして、これらが、組合法で保証された組合員の権利と課されている義務です。
権利と義務は、組合運営における車の両輪ともいうべきものです。従って、いずれかが優先される(例えば、義務の履行より権利の主張を優先させる等)状況では適切な組合運営は望めません。
以上に留意しながら講義すべきであろうと考えます。(89-12)