(26)代表理事の資格と残任義務について
Question
甲事業協同組合の代表理事が、任期途中で理事を辞任してしまいました。そこで、次の2点についてお尋ねします。
1.この場合、その代表理事は、理事としての退任によって代表理事の地位をも失うことになるの
でしょうか。
2.もしそうだとすると、その代表理事の残任義務はどのようになるのでしょうか。
Answer
1.代表理事については、中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)は、商法規定を準用
しており、理事会において理事の中から選任する建前をとっています(商法第261条←組合法
第42条)。
したがって、代表理事は理事であることを前提としますから、理事の任期満了、辞任、解任な
どにより理事を退任した場合には、代表理事をも当然に退任することになります。
2.理事の残任義務についても、組合法では商法規定が準用されており、理事の退任によって理事
に欠員(定数割れ)を生じた場合には、任期満了又は辞任による退任者は、後任者が就任するま
で引き続き理事としての権利義務を有することになっていますが、代表理事についてもこの規定
が準用されています(商法第258条Ⅰ←商法第261条Ⅲ←組合法第42条)。
ご質問の場合に代表理事としての残任義務があるかどうかについては、次の3つのパターンに
区分してみる必要があります。
すなわち、
(1)その退任によって、理事・代表理事ともに欠員を生じた場合には、退任者は理事として
の残任義務を負うと同時に、代表理事としての残任義務をも負うことになります。
(2)また、その退任によって、理事の定数を欠いても、理事会の選任により代表理事には欠
員を生じない場合には、退任者は単に理事としての残任義務を負うにとどまり、代表理事
としての残任義務はありません。
(3)では、その退任によって、代表理事の定数を欠いても、理事には欠員を生じない場合は
どうでしょうか。
一見、代表理事に欠員を生じているので、退任者は代表理事としての残任義務を負うか
のようですが、この場合には、退任者は理事としての権利義務者ではないのですから、代
表理事の地位が理事の資格を前提とする法の趣旨からして、代表理事としての残任義務は
ないとされています。
(88-7-1)