(49)「組合員たる法人の役員」たる地位を喪失した理事の員外理事就任の可否

Question

私どもの協同組合の組合員であるA株式会社の甲代表取締役が組合の理事に就任していたところ、その任期中に、A株式会社が組合員資格事業を廃止したため、組合員資格の喪失により組合を法定脱退しました。
この場合、甲氏は理事の資格を失いますか。あるいは、員外理事として引続き理事の資格を有するのですか。理事の取扱いについてご教示下さい。
ちなみに、組合の定款には、「組合員又は組合員たる法人の役員でない者は、理事については2人を超えることができない。」と規定されており、仮に、甲氏が員外理事の資格を有するとなると、現在員外理事として2人就任していますので、定款で定める数を超えてしまうことになります。

Answer

はじめに、選挙の当時、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として就任した理事(以下、「員内理事」という。)が、任期中に、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失った場合に、理事に地位を当然に失うかどうかについて考えてみましょう。
まず、組合員又は組合員たる法人の役員以外の理事、すなわち員外理事を認めない組合においては、その理事は当然に理事の地位を失うと解すべきですが、員外理事を認める組合の場合については、大別して2つの異なる見解があります。
1つは、員外理事制度は、組合員以外からも幅広く人材を得ることを目的として採用されたものであり、員内理事と員外理事の選出を行う場合の組合員の判断基準はおのずと異なる。
したがって、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として理事の地位を認められていたとみるべきであり、この前提を失ったときは、員外理事を認める組合であっても、当然に理事の地位を失うと解すべきであるとする見解です。
いま1つの見解は、員外理事を認めている組合においては、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失っても、なお理事としての権利義務を有しており、員外理事としての地位に留まりうるので、当然には理事の地位を失わないとする見解です。
現在、指導上は、後者の解釈がとられています(「定本中小企業等協同組合法詳解」中小企業庁編著、226頁、「法人登記書式精義(増補版)上」法務省民事局第4課編、427頁)。
ただし、この場合、員外理事総数が、「理事定数の3分の1を超えてはならない」とする中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)35条第4項の制限、あるいは、定款所定の制限を超えることはできません。
したがって、次に、この法律又は定款規定に違反する場合が問題になります。
このような場合は、組合が、この違反状態を是正するための何らかの調整措置を構ずべき事態が生じたということであり、超過員数分だけ、任意の者を解任する義務を負うということになります。
解決の方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるか、あるいは、員外理事相互間で協議をして、最も得票数の少ない者、組合との関連度が最も少ない者などを退任させるというような方法が考えられますが、員外理事中のだれも退任しようとしない場合には、最終的には、組合法41条の規定により役員の改選を行うしか方法がないと考えられます。
なお、この場合、特定の理事を法令・定款違反に問うことはできませんので、理事全員について改選請求を行う必要があります。このようにみると、実務上の処理方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるようにするのが良いでしょう。(92-8)

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