(12)協業組合における競業禁止・新規事業の展開等について
Question
豆腐製造業6社による全部協業の協業組合が、豆腐・油揚げの製造販売と食料品の仕入販売を協業対象事業として実施している。
売上の増大に伴い、また、取引先からの要望もあり、豆腐・油揚げ以外に、納豆ともやしの製造販売の必要性が生じてきた。納豆は原材料が豆腐と同じ大豆であるため実施可能ではないかと考え、中小企業庁を介して農林水産省まで照会した結果、工程がまったく違うため関連事業には該当しない旨の回答を受けた。
組合としての製造はあきらめ、食料品の仕入販売が協業対象事業であったため、組合員全員の出資による別会社を設立し、豆腐・もやしを製造させ、それを組合に納入、組合が取引先へ販売する体制を取った。組合所有の工場の一部をその会社に貸与し、月々賃貸料を徴していたところ、県から組合の事業として賃貸料を徴することはおかしいとの指摘があった。
また、売上拡大策の一環として、組合工場とは遠隔地域において豆腐会社を設立、豆腐の製造を開始した。
この件についても、組合とその会社の実事業が同じであることから競業禁止の規定に抵触するとの指摘があり、総会を開催して全員の競業禁止を解除することとしたが、経営戦略上同じような会社を設立して役員になることが競業禁止に抵触するのが疑問に思う。
組合では、今後、新規事業の展開を真剣に検討している。また、消費の多様化に対応していくため、消費者を対象とした料理講習会等いろいろな企画を計画しているが、新規事業については、別会社で実施、事業実績があがるようになってから組合に加入させ、協業対象事業を逐次増加させていくことが現行法として可能な方法であろうが、1人の加入で直ちに協業対象事業になるか否か疑問が残る。
・競業禁止について
経営戦略上の関連会社等の場合でも抵触するか。同業の関連会社を設立し役員になることは
往々にしてあることと思う。
・別会社への施設貸与について
組合事業として可能か。
・新規事業の展開について
新規事業を実施する1人の加入で協業対象事業になり得るか。
その場合、組合員全員で別会社を設立、実績をあげながら逐次協業対象事業を追加していく
ことも可能か。
・消費者を対象とした事業の実施について
料理講習会等需要拡大を目的とした事業は、関連事業もしくは付帯事業に該当するか。
Answer
1.商法においては、会社の取締役が自己又は第三者のために行う競業取引について競業避止義務
を定めているが、他の会社の取締役となることは禁止しておらず、取締役は同業の営業を目的と
する他の会社の取締役となることができる(この場合でも、取締役が同種の営業を目的とする他
の会社の代表取締役になるときは、当然第三者のために競業取引をなす場合を生ずるから、競業
避止義務が生じ、取締役会の承認を得なければならないと解されている。)。
中団法においては、協業組合の役員のみでなく、組合員全員及び組合たる法人の役員が自ら競
業事業を行うことを禁止し、また競業事業を行う会社の役員になることも禁止している。これは
競業禁止義務が協業組合制度の本旨である「事業の統合」を担保するものであり、事業の統合の
当然の帰結として、統合した事業については参加事業者が全て組合に依存すべきものであるから
である。競業事業を自ら行うことばかりでなく、競業事業を行う会社の役員になることをも禁止
したのは、それを容認することによって、別会社の設立などにより事業の統合という立法の目的
が著しく減殺されてしまうことを避止するためである。
貴照会のように、協業組合の組合員全員出資による関連会社を設立して、組合員あるいは組合
員たる法人の役員がその関連会社の役員になる場合であっても、その会社が協業事業を行うこと
は事業の統合という立法の目的を減殺することになり、協業組合制度の主旨からして、競業禁止
の規定に抵触するものと考える。
なお、競業禁止の解除については、中小企業庁組織課長回答(平成3年6月13日付け)にお
いて、協業前に受けていた受注残の処理や特定組合員の特殊商品などの場合ばかりでなく、組合
と組合員の行う事業が「同種の事業であっても、組合及び組合員の提供する製品やサービスにつ
いてその種類が異なるなど、双方の事業経営に実際上競合関係が生ずることなく、また競業禁止
を解除することが組合及び組合員の事業経営の強化に資することになる場合等」においても可能
であるとされているので参考にされたい。
2.別会社への施設貸与について
協業組合の行いうる事業は、協業対象事業と協業対象事業に関する事業及びこれらに付帯する
事業に限られている。一般的に、豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする組合が行う施設
貸与は、協業対象事業でないことはもちろんであるが、関連事業あるいは付帯事業にも該当しな
い。しかしながら、協業対象事業及び関連事業を遂行するために必要な範囲内において、貴照会
のように、関連会社に組合施設の一部を貸与することは差し支えないと考える。
3.新規事業の展開について
協業組合の協業対象事業は「組合員又は組合員になろうとする者がその営む事業の部類に属す
る事業」を協業組合の事業として行うものであるから、協業対象事業を追加拡大しようとする場
合、現在の組合員の中には追加しようとする事業を営んでいる者がいなくても、当該事業を営ん
でいる者を新規に加入させることによって、すなわち「組合員になろうとするものが営む事業を」
統合するという形で追加拡大することができる。この場合、新規に加入する組合員の数は1人で
も差し支えない。したがって、貴照会のように、組合が現在行っていない事業を行う別会社を組
合員全員の出資により設立し、その会社を加入させることによって組合の協業対象事業を追加拡
大していくことも制度上可能である。
なお、中小企業庁指導部長通達(平成3年6月13日付け、3企庁第1326号)において、
協業組合の事業転換の認可の弾力的な運用が図れるようになり、設例のようなケースは事業転換
の1つとして可能であると考えるので参考にされたい。
4.料理講習会等需要拡大を目的とした事業の実施について
貴照会の豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする協業組合が行う料理講習会等需要拡大
を目的とした事業は、付帯事業に該当すると考える。付帯事業は、本体となる事業が廃止された
ときには、独立して行うことができないことに注意されたい。