5.規約・規程の機能
組合は、特定の事業を行うことを目的とする団体であるから、通常一定の継続的施設をもち、それを基礎として多数の人々が協同して持続的に事業を行い、かつ、その事業遂行のために最も適合すると考えられる一定の組織を構成する。
こうした組合の組織及び活動についての基本的事項は法律によって枠づけられており、更に個々の組合については定款によって具体化されているが、それ以上の細部にわたる事項については何ら規定することなく、専ら長い間にわたって集積されてきた慣用に基づいて運営されているところが多い。このような習慣としての運営のルールも、それなりに一般化され拘束力をもつものであるが、こうした無意識的、主観的な準則をより合理的なものとするために設定したものが規約・規程である。
このように規約・規程を設定するということは、組合の事業運営の方針なり基準を客観化し、かつ、これを公開する作用をもつものといえる。そしてこれにより、従来事業担当者が自己の経験や勘で処理してきたものが、単なる個人の勘や経験を脱して一定の客観的ルールに従って行われることになる。このように組合の運営に関する実施基準が客観化され、オープンなものになることにより、一部の者の恣意による組合運営の専断を防止することともなり、より一層組合員全体の利益に合致した運営の確保に役立つことにもなる。
規約・規程を設定し、組合運営のために必要な諸々の基準を確立することによる効果は、次のようなものが考えられる。
①組合の経営方針を明確に表示し、事業担当者の活動の目標と、その方針の基準が与えられる。
②組合の経営活動における合理性が確保できる。
③組合の経営活動が標準化される。
④組合経営における統制の基準が明示され、これによって組合における内部統制がはじめて可能となる。
⑤事業実施についての客観的基準が公開されることにより、事業担当者は業務上の運営のための極めて有効な基準をもつことになる。
⑥組合事業利用に当たっての利用条件等が明確化されることにより、組合員の事業利用が円滑なものとなる。
⑦組合の運営に関する基準が明示されることにより、組合に対する組合員の権利義務関係が明確となり、事務手続上の混乱を防止することができる。